「グノーシア」というゲームをクリアした。傑作と名高い作品だったが、やはり傑作だった。
シナリオ・キャラクター・ゲームシステムが密接に相互作用し、そのどれもがこの作品形態でしか表現できないものになっていて、非常に独創的でありながら洗練されたゲームだと思った。
初めはこのゲームを人狼シミュレーターだと捉えていたため、「疑う」「かばう」程度しか表現できないシステムを不満に感じていた。この場合はこいつが嘘つきであの場合はあいつが人間で......と理屈っぽい論戦を交わしたり、逆転裁判のように証言を「つきつけ」たりはできないのである。しかし、ロジックな議論が得意だが人望がなく、すぐに吊られて敗北しがちなラキオというキャラを理解してからは俄然面白くなった。これは論理一辺倒のゲームではなく、人間臭い感情が支配するゲームだったのだ。
イベントを起こしてシナリオを進めるためには、ただ勝てばよいのではなく、普通のプレイではすぐ退場してしまうキャラをなんとか生き残らせる必要も出てくる。人狼ゲームをモチーフに人間模様が描かれ、ループを繰り返してシナリオを進め、各キャラの人間性を理解していくことで主人公の人狼ゲームでの立ち回りが上手くなり、狙った盤面を作り出せるようになって、シナリオがどんどん進んでいく......。これは未だかつて得られたことのない体験で、どうやってこんなのを思いついたのだろうとひれ伏してしまうほど斬新なゲーム性だった。
こうして進められるシナリオも、このゲームだからこそのストーリーで美しかった。どの順番でイベントが進むかがプレイヤーによって異なるオープンワールドのような仕組みを持ちながら、破綻なく進み完璧な伏線回収が行われるシナリオは見事という他ない。
ループものというとシュタインズゲートやRe:ゼロが思い浮かぶが、ループものの主人公として、100回以上の試行錯誤と一期一会をこの手で体験できる作品は他にない。100回以上の試行錯誤というと投げ出したくなるものだが、絶妙な難易度設定、サクサク進められるゲームシステム、大量の隠しセリフを用意する異常な作り込みのおかげで真エンドまで熱中が持続して、ループの苦悩と結末の感動を自らのものとして味わうことができた。
Splatoonやスマブラと違ってプレイヤーが周りにいないせいで、ネタバレ有りの話が友達とできないのが難点である。inscryptionもそうだが、もっと多くの人にプレイされてほしいなと思う。